広沢山 大雄院


 大雄院は約650年前,現在の岡の上団地寺の入りに建立され,広沢山大王院と呼ばれていたが,戦火により焼失,天正年間に現在地に移転し大雄院と改められた.
 開基藤生紀伊守善久,沼田市舒林寺第7世日栄春朔大和尚を招いて第1世となし,以来400年有為転変きわまりない世にあって,脈々と法灯を守り続けて今日に至っています.特に2世,3世,4世までは全盛時代といわれ,10世の頃までは末寺7ケ寺を有し,禅林の修行道場として重きをなしていました.第4世格雲芳逸大和尚の頃に作られた刺繍涅槃図は,群馬県重要文化財として伝えられています.6世綱州規範大和尚代,寛保3年建立の山門(二重楼),四天王,十六阿羅漢を含め平成4年に,桐生市重要文化財に指定されました.なお,第19世真龍凌雲大和尚は,当時としては数少ない曹洞宗の大学林の出身で,漢学の教師として中学林に勤め,大雄院に住職として60有余年,明治,大正,昭和と激動のときを生き,世寿90歳で遷化しました.この間,荒れ放題になっていた諸堂復興を気にしながらも,時代がそれを許さず,先代の悲願遺命を継いで,第20世現住により鋭意復興中であります.近年,境内に施主の一寄進による「水屋」が完成,建築は恒久性を考慮し鉄筋コンクリート造りで,切妻造りの千鳥破風という造形様式で木造りの感じを表しています.
 当山の大行事は,毎年1月15日に幸運祭と称し,本尊に馬頭観音を祭り,厄除け,家内安全,交通安全,だるま開眼祈祷等を承っております.境内には,だるま市,植木市,露天商など出店致し,年々多くの参拝者で賑わっております.また,各団体より坐禅会を受け,朝粥にて接待しております.他に写経会や詠讃歌会,婦人会等へ門戸を開放しておりますので,いつでもお参りにお越しください.なお,当山は境内地より市内が一望でき,同地に200坪ほどの蓮池を有し,裏に山林があるところから,檀信徒に山紫水明の地と評されております.
 社会福祉事業としては,昭和49年に大雄保育園を新築し,その後,体育館,乳児特別室を増築しました.定員150名の園として恵まれた自然環境の中で保育されております.

○県重要文化財「刺繍涅槃図」
 江戸時代・宝永2年(1705)
 374×236cm2
 白い絹布の地に下絵を書き,この部分に金糸と彩色した太絹を並べ,これを細い絹糸で綴るという手法で,釈迦入滅と,それを悲しむ弟子や衆生(鳥獣虫魚などすべて生きとし生けるもの)を描いています.画面の銘文から,宝永2年(1705)大雄院4世格雲の発願で縫師五郎兵衛によって作られたことが分ります.五郎兵衛については,京都西陣の縫師という口承以外詳しいことは分っていません.裏面には,浄財を寄進した檀家の名前が記されており,それらの中には桐生機業界有力者も含まれています.一般に刺繍涅槃図は類例が少なく,美術的・技術的にも優れていて貴重です.桐生機業の隆盛を象徴する資料としても価値ある文化財といえます.

<馬頭観音>
 白馬を馬に頂いておられ,忿怒の相をして,人間の憎悪の心を退治してくださる菩薩である.馬から力がエンジンに代わり昔より交通安全にご利益があるといわれています.

BACK